見る前に跳ぶんだ

日々の雑考。方向性はこれから考えます。

今こそダブルスタンダードを!~日本サッカーへの処方箋~

近年、日本サッカーの凋落が甚だしいです。

代表、アンダーエイジ、ACLと世界はおろか、アジアでさえ結果が出せない状態が続いています。

 

今週もACLの第二節がありましたが、格下相手に大勝を飾った柏以外はてんでダメ。

いよいよ10年ぶりに2シーズン制となるJ1が本日開幕するわけですが、今日はこのACLでの日本勢の戦いを主な論点に、日本サッカーへの処方箋を示したいと思います。

 

 

日本勢はACLチャレンジャーであるべき

まずはこのポイントを明確にする必要があります。近年のACLで日本勢はやたらとパスサッカーで勝負したがりますが、攻撃サッカーでACLを勝ち取ったのは2008年のガンバのみです。2007年に浦和が日本勢としては初めてACLを勝ち取っていますが、この時はギドのカウンターサッカーでした。強力なDF陣に、全盛期だった鈴木啓太、長谷部などボール奪取力のあるボランチ、そして前線にポンテ、ワシントンという所謂オバケ的個人技を持ったクラックを並べ勝ち取った優勝でした。そう、近年の広州恒大とやってることは何も変わらないんです。

 

つまり、日本は「俺たちのサッカー」が出来れば勝てる、という上から目線で戦っているわけではないのです。ここを認識すべきでしょう。ここを出発点に、対策を考えていきましょう。

 

まず相手のオバケFWについて。個人技にやられている。これはもうどうしようもないことです。なぜなら、中国勢を筆頭に、富豪クラブが抱えるFWは正直、Jではもうお目にかかれないレベルの選手だからです。つまり、そこに一種の割り切りを持つことが重要です。しかし、日本人のCBは吉田麻也を除き未だに代表レベルでもJでプレーしており、ここに一対一で戦うことが出来なければそもそも世界レベルなんか目指せません。逆にこういうところで若手を起用して、守備戦術ではなく一対一で勝つ、というJではあまり伸びない部分を学ばせるのも将来的には大きいのかなと思っています。もはや、日本人CBが育ってくれ、というしかありません。投げやりですいません(笑)

 

そして韓国勢のロングボール+球際の強さ、これは今に始まったことではないですが、日本がずっと苦手なものです。また、ハイライトを見ていて気になったのが、日本のチームがDFラインの深い位置で奪ったボールを中途半端に前に蹴ったのが拾われ逆カウンター、というパターンです。レイソル対全北でもポスト直撃の場面がありましたし、ガンバ対城南ではそれで失点しています。これは球際の強さを加味しても、おそらく狙われているでしょう。また、どうやら韓国勢には、日本勢は攻めさせておけば後半は疲れるからそこを狙う、というのが定石になっているらしく、その術中にはまらないためにも真面目に繋ぎすぎず、適度にプレーを切るのは有効です。セーフティーファーストでのクリア、これは意識すればできることでしょう。特に、DFラインでボールを奪われることが多い浦和は気を付けたほうがいいと思います。

 

そして何より大切なのはアウェイで引き分けを狙う姿勢です。

これは弱いチームがしそうなことに感じるかもしれませんが、実はトップレベルでもモウリーニョはこれをよくやます。トーナメントは結局勝ち進めなければ意味がないのです。

柏が苦しみながらも初戦で勝ち点を持ち帰りましたが、これこそが他の日本勢も目指すべきところです。カウンターを狙われているのであれば、敢えて攻撃のインテンシティーを下げて相手にボールを持たせるのも、引き分け狙いであれば十分有効です。特に日本勢にとってコンディションが上がりにくいシーズン序盤は、思い切って引き分けを狙う戦いをすることも必要だと思っています。

まず、グループリーグを突破出来なければ意味がないのですから。

 

 

 

日本病と世界の強豪

これは多くの人が指摘していることなのであまり深堀しませんが、2010年のワールドカップ以後、日本人は「俺たちのサッカー」に取りつかれました。確かに2010年のワールドカップは日本にとっても、世界にとっても意義の大きいワールドカップでした。まず、日本にとっては「弱者の兵法」の限界を見た大会となりました。岡田監督が苦肉の策で導入したアンカーを用いる守備戦術は見事にはまりましたが、地力のまさるオランダ、パラグアイには敵わず、「これ以上はない」というレベルで力を出し切りベスト16で散りました。一方、この大会の王者に輝いたスペイン。彼らが成し遂げた「俺たちのサッカー」での優勝。「上を目指すにはこれしかない」、日本国民の多くがそう思ったのも無理はない話だと思います。

 

そしてこれを信じた四年間。ブラジルで日本の描いた夢は儚く散りました。しかし、それ以上にもっとセンセーショナルな出来事がありました。日本が目指した「俺たちのサッカー」は既に時代遅れにとなっていたのです。今大会で優勝したドイツが見せたもの。それはアクションとリアクション、パワープレーとパスサッカー。そんなん全部できたら最強に決まってんじゃん、という衝撃的なものでした。

 

これは言うまでもなくグアルディオラの功績が大きいです。パワープレーの伝統を持ち「俺たちのサッカー」と逆に振れていたドイツに敢えて渡り、サッカーのパラダイムを変えたグアルディオラですが、ドイツ協会、もとい、代表監督レーブはこれをワールドカップ使用にマイナーチェンジしました。局面におけるパワープレーの導入です。解かりやすく言ってしまえば、「とりあえずクローゼを入れとけ」ということです。現に、パスサッカー対策でドン引きした相手に、ロングボール+クローゼの効果は絶大でした。

 

 

 

今こそダブルスタンダードの確立を!

そう、二本の刃を持つこと。このアプローチこそ日本に必要なものだと思うわけです。

近年、ピッチの周囲を取り巻くテクノロジーの進歩は著しく、もはや一つの戦略軸ではすぐに分析されてしまう時代です。その時取れる対策は複数のオプションを持つ、もしくは分析されても止められない圧倒的なチームを作る。この二つだけです。しかし、後者を成し遂げられるのはW杯で準優勝したアルゼンチンのように、一人で試合を決する圧倒的な才能を擁するチームのみです。日本にまだこのレベルの選手はいません。

では前者にどう取り組むか。それこそがJとACLでのダブルスタンダードの確立です。

丁寧にパスをつないで主導権を握るサッカー。これは日本の中を見ても八宏フロンターレやミシャの浦和など、結構おもしろいです。しかし、同時に堅実に守って勝つサッカーをアジアで展開できるようにするのです。

これが出来れば、結果として戦術の幅は大きく広がることになります。

 

そしてこれはすなわち、代表にも還元されるものです。

堅実に守って勝つサッカーは日本が世界で躍進する鍵でもあるからです。

 

ザックジャパンのハイライトの一つとして、フランス、そしてベルギーに対しての勝利がありますが、前者は耐え抜いてカウンター一発、そして後者は攻め切って打ち合いを制しています。

 

前者に対してはアウェー、パリでの金星にも関わらず反省の弁が多く聞かれていますが、今となっては、本当はこの価値はもっと評価されるべきだったと考えています。

 

コートジボワール戦の後半、攻撃の歯車がかみ合っていなかった日本がリアクションサッカーというオプションを持っていたら。

 

あくまでたらればですが、こう考えるとアジアでの苦境、これは日本サッカー飛躍のためのチャンスでもあると思うのです。

 

今後のACLでの日本勢の巻き返し、そして素晴らしいJの開幕を祈っています。