グアルディオラがカンプノウで見たもの
昨日のCLの感想です。
まず、おなじみのアンセムとともに映し出されるのはカンプノウに移される2009、2011の文字。バルサファンはグアルディオラと分かち合った栄光を偲び、賛辞とともに元指揮官を再び本拠地に招き入れる。
もうこれだけで既に感動w
そして内容はとにかく素晴らしい試合だった。
メッシが先制点を決めるまでは極めて高いレベルでの均衡状態で、お互いの動きの読み合いがもはや決められた動きに交互に動く踊りのようにさえ思える試合内容でした。
まずバルサの仕掛けとしてはグアルディオラが去った後のカンプノウを象徴するような、縦に長いパスを多用。
そもそもあのバイエルンのハイプレスをかいくぐって縦に出せるのが異常だが、スリーバックでスタートしたバイエルンに対してトリデンテの威力を存分に引き出すアプローチとなる。
そして最初のチャンスを迎えたのはバルサ。
シュテーゲンの素早いフィードからメッシが流し、スアレスが抜け出す。
新生バルサを象徴するような、ゴールキーパーからそのままゴールに迫るシーンだったがノイアーがきっちりセーブ。
スアレスのそぶりに重心を左に振られながらも、しっかり右足を残す動きには感嘆の一言。
その後、バイエルンが4バックに切り替えるとバイエルンも徐々にリズムが作れるように。
中中外で一対一からクロスというシンプルな形と合わせて、レバンドフスキーのオバケキープ力を起点にどんどん選手が駆け抜けていくバイエルン得意の形も披露。
この流れでミュラーからレバンドフスキーに絶好のクロスがわたるも微妙に届かず。
前半から、短長のパスをともにハイレベルに使い分けた両チームの攻防が続く。
続いてはバルサ。
今度はスペインサッカーの教科書のような崩し。
ボックス右で行き詰まるとメッシがラキティッチへのマイナスパス。そこに三人目、アウベスが抜け出し、ラキティッチは見逃さずにダイレクトで完璧な浮き球。
胸トラップから地面に落とさずシュートに持ち込む技術が一級品ならノイアーのポジショニング、反応は超一級品。
難なく右足一本ではじき返し、これも得点には至らず。
こうして前半は膠着状態のまま終了。
スコアこそ動かなかったものの、どちらも持ち味を充分に発揮していた。
最近は縦に早いバルサの中で居場所を失い欠けていた二人だがこの日は絶好調。
特にイニエスタはトリデンテが押し上げたスペースにスルスルと効果的なドリブルを連発していて、見ていてワクワクするプレーが多かった。
一方でバイエルンはグアルディオラの代名詞である変則システムの中でアロンソ、ラームがセンターバックのパス回しに加わりながら前線までそのまま上がっていっちゃう形はとらえどころがなく、すごく面白かった。
レバンドフスキー、チアゴを中心とする前線も緩急の付け方に極めて優れていて、どっちがバルサかわからなくなるようなパスワークも見ごたえがあった。
こうして迎えた後半。
後半は中盤での潰しあいが激しさを増す。
特にバルサのCBからボランチにかけてのラインはお互い生命線なので両チームカード覚悟のような激しい当たりを見せた。
その中で次第に輝きを見せ始めたのはトリデンテ。
メッシがボールを貰いに降りるのと引き換えにスアレスとネイマールは前に残り、巧みな駆け引きからバイエルンのラインを手玉に取りギリギリでネイマールが抜け出す。
しかしここでも上を行ったのはノイアー。
このシーンは双方の動きのレベルが高すぎてもはや予定調和のようにさえも思えるシーンだった。
しかし、このシーンを境に均衡は徐々に崩れ始める。
そして残り15分を切ってついにその瞬間が。
ネイマールへのファール云々で混乱してる最中、ノイアーは素早いリスタートを選ぶ。
しかし、これがアウベスに奪われ、ボールがメッシに渡る。
この瞬間、メッシには二人が寄せカバーもついていたが、刹那に左足は振りぬかれ、シュートはまさに針の穴を通すような精度でノイアーの右を抜いた。
この試合はここで決まったといっても差支えないだろう。
信じられないようなレベルで均衡していた試合はたった一人によってダムが決壊したように崩れてしまった。
このあとバイエルンにもう目立ったチャンスはなく、メッシ、ネイマールに追加点を決められジ・エンド。
正直、現在のバルサは強力なカウンターがあるので前ががりを強いられた時点で苦しいのは火を見るよりも明らかだろう。
二点目はメッシがドリブルから、対面のボアテングの体重移動を絶妙に操り、ボアテングはメッシのターンについていけず転がされてしまった。
メッシはノイアーの右肩をループで抜いた。
そして最後は自陣からのロングカウンターでネイマールが抜け出しノイアーとの一対一を制した。
この試合がヨーロッパベスト4、ひいては世界最高水準の戦いであったことに間違えないが、その事実が、メッシの存在感が如何に異次元であるかを思い知らせてくれた。
ファルソヌエベなど、革新的なアイデアでメッシとともに数々の栄光をつかんだグアルディオラはついにメッシを特別扱いすることに疲れ、新天地を選んだ。
しかし、古巣への凱旋で思い知らされたのは皮肉にも、戦術レベルではどうにもならないほど「特別」な才能だった。
これはグアルディオラへの宿題だろう。
まだまだ足りていない。
バイエルンでの革命はまだ世界一の個を破るレベルには達していないのだ。
アレアンツアリーナでの再戦までにはもう時間がなく、グアルディオラも事実上の白旗宣言をしているが、次の凱旋までには是非、更なるバイエルンの進化を期待したい。